第28回日本老年医学会 優秀論文賞

論文掲載号:日本老年医学会雑誌 57巻 3号 308-315
論文題名: 地域在住高齢者における転倒関連自己効力感はフレイルの進展に影響する

著者:上出直人(北里大学医療衛生学部),井上直樹,坂本美喜,佐藤春彦,柴喜崇

<研究概要>
 本研究は、転ばずに活動を行うことができる自信の程度(転倒関連自己効力感)とフレイルとの関連性を、横断データと縦断データの解析から検証したものです。339名の地域在住高齢者を対象に、基本チェックリストを用いたフレイルの評価と短縮版Falls Efficacy Scale-International(Short FES-I)を用いた転倒関連自己効力感の評価を行いました。さらに、6か月後に追跡調査を行い、基本チェックリストによるフレイルの評価を再度実施しました。多変量解析の結果、横断データにおいてフレイルとShort FES-Iの関連性が認められただけでなく、縦断データにおいてもフレイルの新規発生とShort FES-Iとの関連性が認められました。この研究結果から、Short FES-Iを用いた転倒関連自己効力感の評価が、フレイルのリスク評価としても有用であることを示すことができました。

<受賞についてのコメント>
 このたびは、大変素晴らしい賞をいただくことができ、身に余る光栄です。共同研究者の先生方にも、この場をお借りして深く感謝申し上げます。今回の賞をいただいて、改めて感じておりますことは、桜美林大学大学院で老年学を学んだことが、深く生かされているということです。私は、博士後期課程で柴田博先生に師事し、勉強をさせていただきました。老年学を学んだことで、研究に関する確かな知識の習得と自らの考え方の視野を広げることに繋がったと思っています。もちろん、まだまだ至らない点はありますが、今後もひきつづき、老年学で学んだことを活かして、研究や実践に励んでまいりたいと思います。
 最後に、修了生、在学生、これから入学されてくる方、全ての方々にとって、老年学は今取り組んでいる研究や実践を間違いなく発展させる鍵になると思います。今回の受賞を通じて、改めて感じている次第です。